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哲学から演歌まで  

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2014年 11月 23日

高倉健さんが亡くなった

 その訃報が流れた日、政局は大嵐だった。消費税の第2段階10%を15年10月に予定通り上げるか? どうするか。GDPの伸びを重要な判断材料としていた安倍首相は、第1段階の8%アップのダメージが予想以上に強かったとして延期しょうとしているとの噂が流れ、騒然としていた。そんななか安倍総理は17年4月まで1年半延期すると決めた。次回はなにがあっても延期はしないの条件付で。そしてアベノミクスのやった成果、と消費税増税とアベノミクス路線しかない日本再起の道を問うと、衆院は、21日本会議を解散した。
 このいきさつ、政策課題とアベノミクス路線と、志向性は、あらゆるメデイアは報じた、周知の通り。
 日本中での反対派と推進派。政党、政治家、学者、エコノミスト、シンクタンクの研究者たち、輸出頼りの大手製造業も、非上場の町工場も、下町の庶民も、限界集落寸前の地方の住民も、大津波と原発被害で苦しむ東北の人たちも──それぞれ自分のよりなす立場に立って。

 ある人は怒りに満ちて。ある人は穏やかそうに目的はなにか分からぬ形容詞で、とにかく国民への説明責任のまっとうをと、説明とはなんのためにこうしたい、ということなのに、説明すること自体が目的で、押しつけでない説得。そういう大臣クラス自民党幹部が、この2期目の安倍政権で増えた。とはいえ、安倍さん個人と、これらの一部幹部の手練手管は、安倍流話法として成熟した。「嘘も方便」であり「性善説」風「性悪説」とか、恣意的操作の目くらましとか。当時の民主党はその点での政治家としての力量がなかった。それは「総評」を選挙基盤にしている宿命というか、労働者擁護の価値観と施策をベースにせざるを得ないからといった政治評論家もいた。
 もう一つは、党員の出所、すなわち選挙基盤が異なる人たちの集まりでもあったから仕方のないことでもあったのだろう。
 今度の選挙でも野党第一党として安倍政権の数による独走・暴走ができない数の野党勢力結集の役目をどう果たすかが課題のことは間違いない。

 ───デフレ脱出に残るは、経済成長しかない。今までのアベノミクスは、第一の矢・第二の矢、までは狙い通りに結果を出している(とはいえその他の難題が幾つもあることは周知のとおり)。問題は第一弾の8%の消費税増税が予想以上に国民の購買意欲を下降したことだ。第二弾の消費税増税実行可否の重要判断基準をGNPの伸び率としていたが、それが予想以上に低調だった。
 それは一時の現象で根は手堅く上昇している。そうだ、そうでない、の原因分析が多岐争論となった─────

 そして安倍首相は、総理専権事項の衆議院解散権を発動。「今なら勝てる解散」「アベノミクスぼろ隠し解散」といわれながらも「アベノミクスの進む道筋を問う解散」と、安倍総理は「この道しか日本再生の道はない」とぶち上げた。
 強気の発言の裏に、小泉チルドレン議員と同じ、安倍チルドレンがいる。果たして過半数の議席が取れるか内心不安はもっていた。その兆候はいろいろ現れた。
 アベノミクス初期に、国家、国家のガバナンスといった言葉がよく使われたが、今回は一度も使われなかった。規制緩和の弊害・岩盤の鉄壁突破の話もなかった。その代わり国民の、国民生活の、という言葉が何度も使われた。

 甚だしい兆候は、アベノミクス批判めいたテレレビ画面が現れると、どこの民放も直ぐ高倉健の映像に切り替わった。
 この2日間、高倉健さんを扱ったテレビ映像がどの局でも異例の多さだった。チャンネルを回せばどこても高倉健さんが現れた。一日の健さんの放映時間を計り、その比率を取ったなら、恐らく記録的なものになろう。

 安倍総理の今回の政治判断は、国民の反対は多い。このまま放置すれば、自民党の得票率が下がる。前回だって小選挙区制のせいもあり、得票率は低いのに議席数は、多かった。
 高倉健さんを使ったのは「男の美学と、優しさに」日本人の誰ひとり異論を唱える者はいなかった。

 安倍さんは、安倍一次内閣の時もそうだったが、安倍さんの危機・安倍内閣の時に、国民みんなが反対しようのないトップニュースが飛び込んでくる。
 運のいい人だ。

 高倉健さんの人間としての優しさは本物だろう。私もそう思う。アウトローの役に男の強さと美学があった。手を変えしなを変え再三放映された映像は、よき昭和の人情を露出してくれた。

 昨夜ビート武が「健さんを語る」という番組のなかでのちょっとした出演があり、私は彼がどう語るか大変興味をもって、短い語りだっが、目を皿にし、耳をそばだてて聞いた。
 それは、ビート武という映画人でもある異種のコメディアン。彼の映画に暴力をモチーフにしたものが多い。そして難解だがひねった笑いをセットでモチーフにしている。国内より海外での方が評価が高い。
 撮影現場での健さんは、寡黙だが、その合間の健さんは、よく笑いよくしゃべり、よく人を笑わせた。といっていた。

 ひょっとしたらと、私はおもった。ビート武は、暴力と笑い、ユーモアをセットで扱うコツを健さんから学んだのではなかろうかと?

 見終わって私は思った。ビート武も、国民みんなが感じた生の健さんの優しさに惚れていたんだと。女が惚れる男は月並みだが、男が惚れる男は月並みではない。私はホットした。

 同時に、アベノミクスに不利な映像が流れると決まって直ぐ健さんの映像に変わった。

 「危険な大博打。アベノミクス」といった有名な学者もいる。
 アベノミクスという船に乗るクルーみんななのか、それとも「安倍晋三という軍事力をもって統治したいという欲望(DNA)をもった固有種なのか」。「衣の下に鎧が見える」「軍事力をもってしても統治したい欲望・欲求」

 ぶれない統治の党首へのフェティシズムにも似た憬れ、自分の意思を越えて働くベクトル。
 推定同種に、習近平、毛沢東、スターリン、ヒトラーがいる。

 恐らくイデオルギーというよりは、統治欲求が異常に高まったときの脳を、MRIで投影すれば、脳の半分以上は真っ赤になっているかに思えたりする。


 テレビ映像と新聞の両方をもって、日本人好みの〈情〉〈絆〉に人知れず麻酔針を打つ。支配のために。やがて大衆は「長い者に巻かれて生きる」ことが「貧しくても幸せと感じるようになる」。
 満州事変勃発の~昭和6年。その頃流行った数々の「抒情歌」。この時期NHKラジオ深夜便で毎夜2時頃流れてれてくる。

 その頃の歌に思い出を託しているのは、昭和一桁世代。零戦に乗った世代、憧れた世代。

 「零戦」といえば、百田尚樹・原作の「永遠の0」、最近話題の「百田尚樹とタカジンの話」「国会であれだけ追及されてもふてぶてしかった籾井NHK会長、いまいかに」この人達は安倍さんの推薦者。
 国家秘密保護法が生まれた動機は、あのアルジエリア紛争がきっかけ。フランス映画「望郷・ペペルモコ」の舞台となったところ。

 今度の選挙は、膨らむ社会保障費(老人医療費)、世代間公平負担と在宅介護を進める財務省の思惑、冨の分配の平等ではなくだ。社会保障予算の大きいところに、新薬開発費、高度医療機器の開発と導入、これはアベノミクス経済成長拡大戦略として。あまり知られてないらしい話。真偽は確認していないが。

 2025年、オリンピックの5年後には老人人口の山、かつての団塊の世代人口が減って行く時期。それまでをどう凌ぐか。所得の世代間格差は、自然消滅する。若者人口が増えれば、働き手が増え、自然働き手の所得は増えるから、という学者もいる。人生50年といわれた時代は、認知症もパーキンソン病もいなかった、と。


 あの橋本治が、駒場祭にイラストした「とめてくれるな、おっ母さん背中の銀杏が泣いている」というポスターも、色濃く……我らの健さんがとうとう逝ってしまった! と。 

by kuritaro5431 | 2014-11-23 09:56


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