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哲学から演歌まで  

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2013年 03月 11日

今日はあの日から丸2年たったのにいまだ「百家争鳴」

 昨日の日経新聞の「中外時評」に「金融政策百家争鳴の時代」との論説副委員長・実哲也氏が書かれた論評があった。サブタイトルには「物価2%は究極の目的か」とあった。


 今朝は、早朝から、ラジオ、新聞、テレビでは、あの日あのときの瞬間に、親族や隣人・友人を助けられなかった自責の念が、今なおトラウマの悲しみとなって生き残った被災者の心に大胡座をかき拭いされずにいることを今更のように知らされた。
 地震は天災で津波のくる瞬間まで、幸せの時間と空間のある生活があった。その次の瞬間、多くの恵を与えてくれた海が、一瞬にして牙を剥き、人間の命も幸せも残酷に攫っていった。
 津波は天災であるが、原発の爆発による放射能被害は人災である。政治的意図の絡む原発の安全神話が生んだ人災であることが明るみにでた災害であった。
 放射能被害を恐れる住民は、家族でありながら別居の生活をするしかない。今も。
 天災も、人災も人の命と関わることには変わりはないが、天災はほとんど瞬時に片が付くが、いたましい記憶として残る。瓦礫・瓦礫と残骸のように疎まれる物のなかには、昨日まで家族とともに暮らしていた生活の記憶そのものがある。位牌であったり、写真であったり、孫がいつも抱いていた人形であったりが、ささくれた木片と混ざりある。天災だからしかたないとあきらめられる。その向うに無常を感じて生きてゆく。それに比べ放射能被害者は何十年も生きたまま危害の恐怖から解放されない。さらにその放射性物質の廃棄処理については、これまた政治的意図による処分しかないとする疑いを秘めている。



 今朝の朝刊一面の大見出しには「政策空回り 復興格差」「避難生活、なお31万人」とある。

 この前の国会答弁で、安倍総理は、アベノミクスについてはあれほど熱気を帯びた答弁をしているのに、震災復興となるとトーンは低い。それは質問した野党議員のいった言葉だった。
「東北の震災復興なくして日本の再生はない」といってることに変わりはないと今でもいっている。各省の縦割り障害を乗り越えて、安倍政権は横串をさして省庁一体となって機能してみせる。といいきったものの、政策の空回りの実態は、一般大衆向きの地上波デレビで解説付きで放送されるにいたっている。

 今、長いデフレから脱却し、景気がよくなり、元気のいい日本が甦ることを日本人みんなが願っている。私も願っている。
 アベノミクスは3本の矢が有機的にかみ合い運用されなければ成功しない。といわれており、総理自身も、アベノミクス支持族もみなそういっている。そのなかでの肝はなんといっても大胆な金融緩和政策である。その金融政策一つとってみても先述の「中外時評」で実哲也氏が「百家争鳴」といったのである。
 アベノミクスは、当然といえば当然であるが、金融政策のみでなく、グローバル時代における政治・経済・格差問題・外交・安全保障・国境問題・エネルギー問題・その他資源問題・民族・宗教・さらには次世代の覇権国家問題、等々が絡んでのことである。

 それぞれの領域において、学説にしても、歴史的経緯にしても、一家を構え論拠をもった人たちの主張のせめぎあいのなかで、安倍総理がどう統治できるか。予算はつけても、上記のように各省がばらばらで実行して成果がだせるのか。と、アベノミクスに国民の期待が高いだけに裏の不安はぬぐえない。
 アベノミクス推進派と懸念派のテレビ討論はやたらと賑やかである。
 成熟期に入った先進国は、各種要因からGNPの成長はあっても国民の可処分所得には必ずしも反映しなくなっている、という説。どこかは豊かになってはいるが、勤労者の年収が増えるとは限らない。金融緩和で景気は回復しない。経済政策に魔法はない。本丸は規制緩和だ。
 こんな討論の後、どこかの推進派の政治家は、経済の現場を知らない学者や評論家の言葉にリアリティはない。経済は生き物だ、アベノミクス政策を打ち出しただけで投資家や、市場は反応し「円安」「株高」に現実移行しているではないか。グローバル化したマーケットは「気」で反応するものなのだ、と。
 デフレのカンフル剤は、「適度のインフレ」が最適とは経済の常識だ。経済が成長すれば遅くとも時差2年以内に勤労者所得が上昇し、国民は豊かさを実感できるもの。これも経済の常識。とその論拠を説明するでなく、懸念派はあれこれ「陰謀説」を唱えるが、それは健康的な議論ではない、という。
 藁おも掴みたい景気待望論の地上波テレビ視聴族は、つかの間の変化の現状に感激して、そうだそただと、安倍政権の支持を押し上げている。



 そんな環境のなかでの「東北の復興なくして日本の再生なし」なのである。安倍総理は、先日東北の被災地を訪問し、地域住民の要望を聞き、おおざっぱにいえば「各省を挙げて前向きに対処する」と約束した。
 安倍総理を囲んだ地元住民は、進んでいない復興の要因とか現状を話し、復興の推進を要望していた。怒りを露わにした人もいたのかも知れないが、どの報道にもその姿は出てこなかった。原発被害についての対策推進にしても要望と聞きとれるていどの印象であった。
 それがあれだけの天災・人災を同時に受けた東北の人たちの〔普通の態度〕なのかとも思えたりしたが。確かに震災直後の各テレビや新聞は、原発や放射能被害の報道にかなり神経を使って政府や東電に不利な情報は押さえているようにみえていた。ところが、2年目に入ったせいか、NHKですら被災者サイトの話題もかなりはっきり流すようになったと今回は感じた。
 原発の核廃棄問題や、原発基地の真下にあるという活断層問題にしても、政治・政局と切っても切れない関係にあったことが、一連の3.11対応で分かったからだ。
 ところが政治活動とは切り離されたボランティア活動とか、「花は咲く」の歌声運動などが、日本人特有の「代償を求めない絆の美意識」として美化され評価されてきた。私はそれはそれでいいことと思っている。
 しかしそのことが、結果的に安倍総理の統治能力の懸念に荷担していることも確かと思えたりする。強気の発言や態度・大型予算をつけただけでガバナンスが向上するわけではない。


 そんなおり、安倍政権としてはじめに訪問したインドネシアで、昔フランスの植民地だったアルジェリアに世界を股にかけた日本のプラント会社日揮の社員や幹部がイスラム原理主義者に殺害された。その話は、このブログ2013/02/10の『「演歌」「怨歌」のものがたり』の後段に、ジヤンギャバン主演の「望郷」と関連づけて書いた。テロと暴力は許せないとの共同宣言とかかわる物語であった。
 オバマ大統領アメリカ訪問の際には、野田政権時代に閣議決定した「2030年年代に原発稼働ゼロ」を見直す。と約束している。

 安倍政権発足時には、「国民は自民党を支持して投票したのではない。決められない政治に辟易して自民党に投票しただけ」と、得票率と比例しない議席数だと、いやに謙虚であったが、政党支持率の高揚と共にいつしか「国民は自民党の公約を支持して投票した」に態度が変わってきた。それはアベノミクスに希望を繋ぎたい国民の「気」からきていることだった。



 先日、次期日本銀行の総裁と副総裁の2人から、引き受けについての挨拶があった。副総裁の一人は、安倍政権の政策を支持し、日本銀行として金融緩和と2%の経済成長目標を2年以内に達成するよう努力する、といった。しかし、もし達成できない場合の責任は、辞任までとし、それ以上の責任はもたないものとするといった。それに対し、もう一人の副総裁候補は、必ず2年以内に2%目標を達成するといった。

 この前、アベノミクス推進派のアメリカ返りの女性顧問が、デレビ座談会で、アベノミクスは日本にとっての最後のチャンス、是か非でも成功させなければならない。しかし難易度の非常に高い政策だ。2年以内の達成は難しい、といった。


 もし達成しないとなると、日本人は2年ばかりの「日本甦り幻想を夢見た」ことになり、その見返りにインフレと、税の高負担。さらに経済同友会もいいはじめている高齢者の年金減、健康保険料の3%への増額、など必至となろう。そして膨大な国家の負債を子や孫の代に残すことになる。

 今まで資本主義経済を支えた各時代の基幹産業。それは主として第2次産業としての製造業であった。この基幹産業は大量の雇用を抱えうるキャパシティをもっていた。それが先進国の力であった。その各国が、みな成熟期に入り衰退のライフサイクル期に入った。
 その証拠に、新卒の製造業希望者が減っている。
 しかし1%ぐらいの経済成長を図らなければ資本主義経済は持続できない。

 そこで私は思う。ものやサービスを生産しない金融資本主義より、小規模産業、多品種少量のコンテンツという個別存在性をもった産業をもって1%の成長を維持する。その方向が健全ではないかと思う。
 アメリカにおいてはすでに、タブレッドタイプのIT産業は、基幹産業ともうなり得ないと、次世代の「3Dプリンター」に期待に移行している。まさに価格競争のない、低コスト・多品種少量の製造への革命ともいえる産業に成長してゆくであろう。3Dプリンターは、他の加工機械と同様の一種であろう。物づくり加工の選択肢が格段に広がったのである。
 さらに3Dプロデクターも、3次産業で期待され、研究開発が進められている。
 将来を期待できる産業への、長期的投資のあり方。一部の投資家が、株主利益短期回収の金融の流れが、1.9ともいわれる格差社会を生んでいるという論者もいる。その人はベンチャキャピタルの現場を熟知した人だった。


 明るいニュースとして、アメリカ東部でシェールガス採掘本格化。および、今日のニュースで報道された日本の愛知沖海底にメタンハイグレートの埋蔵確認。これによってエネルギー資源確保に関する世界的紛争も、形が変わることになることを期待したい。



(注)今日の記事では、あえて主張者の氏名を差し控えた。
 

by kuritaro5431 | 2013-03-11 12:58


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