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2015年 04月 06日

もうひとつの日本刀の源流は伝説だろうか

 私はこのブログにおいても、なぜ日本刀だけが砂鉄を蹈鞴(たたら)で噴いた鉧(けら・粗鋼)に含む玉鋼から造ったのか。そして日本刀とは、の定義に「玉鋼で造られた鎬づくりの彎刀」とあるのは? 必ずしもそうでなく、軍刀需要が増えた昭和期では「総称としての安来鋼でつくられた刀」ともいわれる。
 
★古刀は(平安時代の延歴5年・806年空海帰朝・伯耆安綱の刀、日本刀モデルとなる・から桃山時代の慶長元年・1596年まで)(750年)
★新刀は(桃山時代の慶長2年・1597年から江戸時代の終わり慶応3年・1867年)(270年)
★現代刀(明治以降)

 こうしてみると圧倒的に古刀の時代が長かったことが分かる。前にも書いたように、古刀時代の作刀法は、一本の鉄で鍛錬することで脱炭し、さらに焼き刃土を刀身に塗り、鉄の変態特性を抑え、焼き刃土を塗らない刃の部分は変態させ、折れず曲がらぬ日本刀を造った。それには特級品純度の玉鋼を使った。古刀期の後半には、もう純度の高い玉鋼は枯渇しはじめていた。

 新刀の作刀法は、刃の部分だけ純度の高い鉄を抱かせ、その他の鉄は、神社仏閣の修理解体などででた古釘などを使ったりして、素材調達に腐心して作刀した。新刀の後期では、質の悪い砂鉄で製鉄した鉄で作刀した。砂鉄の品質は、一に山砂鉄、二に川砂鉄、三に浜砂鉄といわれ、奥出雲は、山砂鉄の山地だった。その後抱かせる鋼も枯渇して、奥出雲、安来の蹈鞴の首領たちが出資して、新しい抱かせ専用の鋼を考案した。その段階で幕府がどのような支援をしかは不詳。明治に入り日露戦争もあり、その後満州事変もはじまり軍刀の需要はいやが上にも高まった。

 いつ頃から安来にあったか知らないが、日立特殊鋼株式会社が日本の優れた特殊鋼の開発に貢献し、用途開発も拡大させた。特殊鋼の開発のみならず日本刀の刀鍛冶が身につけた異なった鉄でも、鍛錬によって接着させ一体化してしまう作刀法が功して、青紙スーパー、青紙、白紙、黄紙と粘りと堅さの品質ランク別、鋼片を商品化し、軍刀はもとより、軍艦、戦車の鋼板、大工道具、鍬や鎌、斧、鉈、鋏、肥後守の小刀、カミソリ、医療用メス、果ては洋式ナイフまでにいたった。もちろんこれは玉鋼ではなかった。

 今は、これらの鋼を一括して「安来鋼」といっているようだ。日立特殊鋼の製品か、地域ブランドか、他の会社も「安来鋼」の名称で作っているのか、作っていいのかも知らない。青紙、白紙などは固有名詞かも。
  

  ところで、こんな推論もできるかも。歴史研究家からは失笑される話かもしれないが、私の30歳から82歳のこのかたの疑問でもあったことだから。
 
 日本の刀物の起源から現代までには、日本の原住民といわれた縄文の12000年、弥生の3000年の間にいくつものルートで渡来した民族という説と同様に、中国→百済→日本というだけでなく、幾多の史跡にその痕跡が見られる。
 古来から製鉄は、鉄鉱石を高炉で溶かし、様々な鉄器から巨大戦艦まで造った歴史がある。高炉で鉄鉱石を溶かすには、コークスが必要なことはかなりの昔から知られていたようだ。十字軍の兵士の使ったといわれる両刃の剣は、カーボーン粒子の多い鉄であった。よく切れるが折れやすいので重厚にした。ダマスカスの鋼は、インドのウォーツ鋼との世界初の合金だったなどなど謎めいた伝説も多い。

 日本刀は、平安の中期に伯耆国・安綱という刀工が、確立した日本刀のモデルが以降の日本刀を規定したといえそうだ。それは「「玉鋼で造られた鎬づくりの彎刀」であり「刀身の握りは、刀身と一体の鉄でなく、握りやすい木製の柄(つか)で作られ、その柄のなかに刀身の手元「なかご」という、を差し込み、柄と刀身を一体化するために柄と刀のなかごに「目釘穴」をあけ、目釘を刺した。なかごには刀工名を鏨で打った。
 以上が日本刀モデルの最低の規範となったと私はみている。
 その安綱の銘入りの彎刀は、「童子切り」のニックネーム「大江山の酒呑童子を成敗した刀」の伝説をもち国宝として現存している。

 その他日本刀特有の柄・鞘・鍔・小柄などは工芸品として多様に分業化した職人世界が形成される。刀身の彫り師、研ぎ師も分業化し、制作時間をいとわず、ひたすら完結した美を求めた。
 日本刀の刀身は、刀鍛冶の魂・命として武闘具でありながら、刀身の反り、刀身の地肌、多様な刃紋の文様、輝きを、刀工が醸す美意識・日本人の精神世界の象徴として流派を形成し、歴代の天皇も刀剣の持つ美のオーラと、国家統治の権威の象徴として、そのものがもつ霊性にこだわった。
 
 彎刀の以前にあった日本の太刀は、聖徳太子の肖像画にあるように、細身の直刀で、刀といより太刀だった。しかも安綱モデルでなく、刀身は、切り出しのように研がれた片刃であった。それと同様の様式のものが奈良時代から平安時代に征夷大将軍として奥州の蝦夷(エミシ)を征伐した田村麻呂の所持した太刀も同様で、鞍馬寺所蔵とある。

 さらにその直刀の以前は、というと正倉院に現存している「蕨手刀」(わらびてとう)というのがある。脇差し(二尺以下、一寸以上)ほどの刀である。刀身は手元がくの字に曲がって、握りは刀身と同じ鉄でできている。
 どうやらこれは渡来物で、一説によると日本刀の原型ではないかとも言われている。
 資料で見ると、握る柄の方の先が蕨の新芽のように曲がり、片手での馬上の闘いにも、便利に見える。立派な鞘も、鍔らしい物もついている。それがやがて直刀ではあるが長くなり、刀身と一体の鉄は、同じく手元でくの字に曲がり、握る柄は中抜き・透かしが入り刀身を軽くしている。これを毛抜き型太刀と呼ばれていた。
 それが進化して安綱モデルになったという説である。


 そこで今日の本題であるが。古代奥州に、たたら製鉄と並ぶ、砂鉄より不純物の少ない(注・他の資料では不純物の多い鉄ともある)「餅鉄(べいてつ・もちてつ)」という円礫磁鉄鉱(えんれきじてつこう)があったと。餅鉄は、河川に流され摩耗して円礫状になった磁鉄鉱(Fe3o4)のこととある。
 餅鉄使用の在銘の刀剣もあり、高炉銑(鉄鉱石を高炉に入れて溶解されて出てきた鉄は、カーボン粒子の多い銑鉄)で刀の鋳物を作り、脱炭と鍛錬を行った製品ではなかろうか。または、当時は高炉銑を原料にのべ鉄も製造していたから、銑卸しの方法で鋼も製造しただろうか。
 または、餅鉄を砂鉄採取した鉧と同様に、砕いて、選別し、後は刀鍛冶に流通し、刀鍛冶が各自工夫してものにした、とも推理できる。


 現代においては、各流派の刀鍛冶の末裔は、ほとんどが包丁や小刀、洋式ナイフの店になった。銃刀法との関連もあり、法に触れないぎりぎりのところで商いしている。刀鍛冶の末裔と唱える人たちの「売りの技」は玉鋼とは無縁な、「異なった鋼材を鍛錬一つで接着し一体化する作刀の秘伝」とした。
 それは、多層の地肌を醸す小刀、ナイフであったり、妖艶な不規則な文様を醸すダマスカス鋼(これは玉鋼のような一種類の鋼ではなく、インドのウォーツ鋼をベースにおいて、異種の鋼を混ぜた合金)の鍛錬技術に近い。
 それを「正宗作刀の秘伝のナイフ」などとして、クールジャパンの一環に乗せようとする動きもある。一昨年から京都の刃物屋にならんだ、これらの打ち刃物は、店ごとの別注で、混ぜる鋼の種類によって妖艶さも変わりも値段も格段高くなる。


 この記事の締めくくりに当たって考えさせられることは、古代出雲の国で、斐伊川の上流に頭は八ツ胴は蛇の大蛇「八岐大蛇」が棲んでいて、アマテラスに追放された弟のスサノオが出雲に降り立った。そこに八岐の大蛇の生け贄にされんとする稲田姫がいて助けるために大蛇に濃い酒で酔わせ、剣で大蛇を斬り殺した。すると大量の血にまみれた一振りの太刀が現れた。それが天叢雲剣(あまのむらくもの つるぎ)のちのヤマトタケルが使った別名・草薙剣(くさなぎのつるぎ)である。
 八岐大蛇とは、奥出雲の山砂鉄採掘の首領であったと。やがてスサノオと稲田姫は幸福な結婚生活を送るが根の国=冥界にくだっしまう。その後は、オオクニヌシが出雲神話の中心となる。出雲神話でもスサノオは、鉄を制したシンボルとしてあがめられた。
 素戔嗚尊は、後京都東山八坂神社に祀られている。
 天日槍(スサノオ)は、姿を隠した姫を求めて放浪の旅を続けているとき、蘇民将来さんの家に泊めてもらった。お礼に、疫病対策の茅の輪(血の輪)の使い方などを伝授して去った。蘇民将来の家の者は、その後流行った伝染病に罹らず、他の家の人々は残念にも亡くなった。そこで、「蘇民将来の子孫也」(祇園祭の粽に巻く)を名乗るお札を用意しておけば伝染病を免れる、という民間信仰が生まれて広まった。

 八坂神社からほど近い、三条大橋を東へ旧東海道をすすむと京物古刀作刀の鍛冶場粟田口がある。あの謡曲「小鍛治」にでてくる三条宗近の名刀「小狐丸」の鍛冶場のあったところ。謡曲で、一条天皇が夢枕に、宗近に、「天叢雲剣」にも負けぬ刀を打てと命じたほど、朝廷と剣・日本刀は天皇の権威の象徴であった。

 ところが、奥州の俘囚といわれた蝦夷(エミシ)が、長年にわたり大和朝廷を手こずらした刀は、餅鉄でつくった蕨手刀ではなかったかと、悲しい伝説となって、京都清水寺の境内の石碑に、名残をとどめている。













































































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by kuritaro5431 | 2015-04-06 09:37