2013年 10月 07日
この記事を書きたいがために、随分と遠回りしてしまった。 2013.9.2「実証主義の社会学と虚実を肯定した日本思想───日本のジレンマ」。この記事の最後の行に、次回「弁証法再考」で、私論を書いてみたいと思っている、と書いてから……… 「選択した働き方」(1)(2)(3)(3.2)(4)(4.2)、「半フリー契約」の働き①②③と、9つもの記事で遠回りしていた。 その理由の一つに、ブログの右肩にいつも挙げている「カオスの時代、ホワイトカラーの中間所得層をいかに増やすか」があった。 その考えを長年背後からずっと押し挙げていた、それこそ私にとって虚実ない交ぜの「弁証法的論理の幻想か、私にとっては〔實〕であったのかの再考・再点検」である。 それは、2009.4.23「弁証法 その1」から端を発した「弁証法の五段階」であった。 私は、立命館大学の経済学部に、1953年(昭和28年)に入学した。美作のど田舎から京都にでてきた私は、制作ののやらない、学生自治活動の[映画研究部]に入部して4年過ごした。 当時、私から見た京都育ちの部員の映画鑑賞眼は洗練されていた。取り柄のない田舎者の劣等意識はエスカレートしていったものだった。洗練された都で育まれた批評的鑑賞眼は作り手の感性ではなかったが、優れた創作者(クリエーターやアクター)の隠された美意識をも見逃さない優れた鑑賞者(美意識感受の消費者であり、自らもその時間消費を楽しむ消費者)であったといえた。 たまたま、その時代、その時代の若者も、大学の学風もマルキシズムの潮流のさ中だったこともあり、私の劣等意識を凌ぐモチベーションとしても、私との相性も良さそうに思え、その潮流に乗った。そんな思いつきが思いの外発展して[映画研究部]のなかでの、優れた鑑賞者とは違うポジションを得た。 そして、4回生のとき、以前から資本論研究で有名だった経済哲学の梯秀明教授の講義を聴き「夢か幻か、憑きものにつかれたよう」に「弁証法の五段階」という論理の幻想が膨らみ、私の情動と思考回路を刺激した。 それは 1,同一性(同種類の事柄)(同一性のものでないと発展のしようがない) 2,差異性(それでいて異なったもの) 3,矛盾(それらが互いに問題を抱えている) 4,対立(やがてそれらは、紛争の関係になる) 5,発展(そして、矛盾も、対立も越えて、新しい価値を創造することになる) であった。 それ以降、私の思考を今日80歳を過ぎるまで支配した論理となっていた。お陰で「人間は生きてるだけで大事業をやっているんだ」と、いわれる世の中を生きてこれたと思っている。 その時期(4回生の頃)なぜそんな幻想に取り憑かれていたのか、今となっては思い出しようもない。恐らく、4年間のマルキシズムへの憬れや学習と、映画研究部部内でのディスカッションから体験したものだったろうと思う。 「同類の者〔族〕同士でも、違うところあり、そこには矛盾や対立は付きもの、それを越えて発展するストーリー(ドラマ性)にロマン(生産性)を感じたから」かも知れない。 そして五十六年も経った2009.5.30の「弁証法 その3」にあるように、、梯先生の講義を今では唯一聴かれた立命館大学哲学専攻の服部健一教授から、私が問い合わせたこの件について、返事をいただいた。 それまでは、マルクス弁証法として梯先生が話されたと思い込んでいたが、服部先生のご返事によれば、それはヘーゲルの言葉だった。それから私はそれらしい言葉をヘーゲル弁証法で探したが、服部先生がいわれたように、本流の説、三段階説しか載っていなかった。 ほかに尋ねていた、ヘーゲル弁証法ととマルクスの弁証法の論理的違いは、、パーナリテイによって違うといわれた梯先生の話は、哲学者においてよくいわれること、と服部先生は書かれていた。その後、私にとってパーソナリティという言葉は、自己アイデンティティと深い関係性があるとの思いが深まっていくことになる。 「前方の旅と後方の旅」については、ここでは割愛する。 最近、私のアタマを悩ます言葉に「同一性」がある。その言葉の説明に、あのとき梯先生は「黄色と三角は、同一性がなく発展しない、発展のしょうがない」といわれた記憶が幻想の中とはいえ今も明確に生きいる。 哲学でいう「同一性」とは、質・類の同一性ではなく、数的同一性をいう、扱うと哲学書にはあり、それが私の頭の中を混乱させている。「黄色と三角」は、質的同一性であり、私が関心をもったのも、圧倒的に「質的同一性」であったから───
by kuritaro5431
| 2013-10-07 13:42
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